【UPC デュッセルドルフ地方部 / 2026年7月27日】UPC_CFI_1923/2025, UPC_CFI_1062/2026 - EP 3 079 153に関する特許侵害訴訟および取消反訴手続の停止命令(手続規則295条(d)に基づく当事者双方の申立て)

1. 事案の概要(事実経過・請求内容)

本件は、欧州特許第3 079 153号(EP 3 079 153)の特許権者である原告(Dolby International AB)が、被告ら(Beko Germany GmbHおよびArçelik A.Ş)に対して提起した特許侵害訴訟(UPC_CFI_1923/2025)、ならびに被告らから提起された特許取消反訴(UPC_CFI_1062/2026)に関する手続決定(Procedural Order)である。

【事実経過】

  • 2026年7月17日: 原告および被告らの間で、本件特許侵害訴訟および取消反訴、ならびにこれらに付随する一切の手続を終局的に解決する和解契約(Settlement Agreement)が締結・署名された。
  • 2026年7月23日: 原告は裁判所に対し、和解合意の成立を報告するとともに、侵害訴訟および取消反訴手続を即時停止(stay of proceedings)するよう申し立てた。
  • 2026年7月24日: 被告らは、原告の手続停止申立てに同意し、これを支持する旨の書面を提出した。

2. 判決の主文

統一特許裁判所第一審裁判所 デュッセルドルフ地方部(Panel 1)は、以下のとおり命じる。

  1. 本件特許侵害訴訟および特許取消反訴の手続を、即時に停止(stay)する。
  2. 成立した和解合意に鑑み、2027年4月8日に指定されていた口頭弁論期日(Oral Hearing)を取り消す予定とする。当事者は2026年7月30日までに本取消予定に対する異議を申し立てることができる。

3. 主な争点

  • 争点1: UPC手続規則(RoP)第295条(d)に基づく手続停止要件の充足性
    当事者双方による申立ておよび同意の書面提出が、手続規則第295条(d)に規定する「当事者双方の共同申立て(joint request of the parties)」に該当し、手続を停止すべき事由となるか。

4. 裁判所の判断ロジック(判示の要旨)

裁判所(Schumacher報告判事に代わりThomas裁判長が発令)は、以下のロジックに基づき手続停止を決定した。

【規範および当てはめ】

UPC手続規則(Rules of Procedure of the Unified Patent Court: RoP)第295条(d)に基づき、裁判所は当事者双方の共同申立て(joint request)がある場合に手続を停止することができる。本件において、原告が提出した手続停止申立書面、およびこれに同意・支持を表明した被告らの書面は、実質的に同条に規定する「当事者双方の共同申立て」に該当すると評価される。

したがって、裁判所は裁量を行使し、本件侵害訴訟および取消反訴の双方について即時手続停止を命じるとともに、既に期日指定されていた口頭弁論の取消しに向けた手続的措置を執るものとした。

5. 実務上・判例上の法的なポイント

  • RoP 295条(d)の実務的運用: 単一の共同名義書面でなくとも、一方当事者の申立てに対して相手方当事者が同意書面を追完・提出することで、RoP第295条(d)の「joint request(共同申立て)」要件が充足され、迅速に手続停止命令が発令される実務慣行が確認される。
  • 和解成立時の手続進行と期日取消プロセス: 和解成立時において、手続停止の決定と同時に将来の口頭弁論期日の取消意向(intention to cancel)が示され、短期間の異議申立期間(本件では決定から3日後)を設定することで、裁判所の審理日程の効率的な管理・解放が図られている点に実務上の留意が必要である。

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