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【EPO Technical Board of Appeal / 2026年06月30日】T 1283/24 - 特許権者のテキスト同意撤回に基づく特許取消決定(EPC113条(2))

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 当事者: ・特許権者(審判手続における被抗告人):RTX Corporation ・異議申立人(審判手続における抗告人):Safran Aircraft Engines 事実経過および審理の推移: 欧州特許第3557000号(発明の名称:「Auxiliary oil system for geared gas turbine engine」)に対する異議申立てにおいて、欧州特許庁(EPO)異議部は予備的請求3(Auxiliary Request 3)に基づく補正後の特許維持を認める中間決定(Interlocutory decision)を下した。これに対し、異議申立人および特許権者の双方が審判(Appeal)を請求した。 審判手続の口頭審理(Oral proceedings)において、特許権者は自らの審判請求および予備的請求3より上位の請求を取り下げ、被抗告人の立場となった。さらに口頭審理の終結時、特許権者は唯一残されていた請求である予備的請求3を自ら取り下げるとともに、特許維持のためのいかなる特許テキストに対する同意(approval)も撤回した。異議申立人は、原決定の取消しおよび本件特許の取消し(revocation)を求めていた。 2. 判決の主文 1. 原決定を取り消す。 2. 本件特許を取り消す(The patent is revoked)。 3. 主な争点 争点: 特許権者による特許テキストの同意撤回および全請求取り下げに伴う手続的帰結(EPC第113条(2)の適用) 4. 裁判所の判断ロジック(判示の要旨) (1)法的規範の定立(EPC第113条(2)) 欧州特許条約(EPC)第113条(2)の規定に基づき、EPOは特許権者によって提出された、あるいは同意されたテキストにおいてのみ、欧州特許の審査および決定を行うことができる。特許権者が特許のテキストを最早承認しない旨を表明し、係属中のすべての請求を取り下げ、維持のためのテキストを一切提案しない場合、かかるテキストへの「同意」が存在するとはみなされない(理由1)。 (2)本件事実への当てはめおよび結論 本件において、特許権者がすべての請求を取り下げ、テキストへの同意を撤回した結果、審判部が審理の基礎とし得る特許テ...

【EPO Technical Board of Appeal / 2026年05月26日】T 0228/24 - 情報保持装置に関する特許の新規性(EPC 54条(2))及び抗告審における訂正請求の不審理(RPBA 12条(4), (6))

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 本件は、特許権者(抗告人:Infotoo International Limited)が所有する欧州特許第3224766号(発明の名称:「情報保持装置」)に対する異議申立手続の控訴審(抗告審)判決である。異議申立人(被抗告人:Leonhard Kurz Stiftung & Co. KG)は、EPC第100条(a)(新規性・進歩性欠如)、(b)、(c)に基づき特許の取消しを求めた。 欧州特許庁(EPO)異議部は、主請求(特許クレーム)および補助請求1, 2, 6, 7が先行技術文献D1(JP 2013-39726 A)に対して新規性を欠くこと、補助請求3, 4がEPC第84条および第123条(2)に違反すること、並びに補助請求5を不認容(Art. 114(2) EPC)とすることを理由に、本件特許を取り消す決定を下した。 特許権者はこれを不服として抗告を提起し、特許の維持(主請求、並びに抗告審において初提出された24件の請求を含む計31件の補助請求)を求めた。口頭審理において特許権者は主請求を取り下げ、抗告審における補助請求9を新たな主請求とし、補助請求1〜8C, 10〜16を予備的に主張した。 2. 判決の主文 本件抗告を棄却する(抗告人の請求はすべて退けられ、特許取消決定が確定した)。 3. 主な争点 争点1: 主請求および補助請求11〜13, 15, 16のクレーム1に関するD1に基づく新規性(EPC第54条(2)) 争点2: 異議部が補助請求14(異議審における補助請求5)を審理不認容とした裁量判断の当否(RPBA第12条(6)) 争点3: 抗告審段階で初めて提出された補助請求群(補助請求1〜8C, 10)の受容性/審理対象性(RPBA第12条(4), (6)) 4. 裁判所の判断ロジック(判示の要旨) (1) 争点1:D1に基づく新規性の欠如(EPC第54条(2)) 審判部は、主請求のクレーム1がD1に対して新規性を欠くと判断した。 クレーム解釈とD1の対比: 主請求のクレーム1は、空間周波数領域における極座標(周波数振幅 $f_i$ および角度 $\theta_i$)で定義される複数の「周波数データ要素(frequency data element...

【EPO Technical Board of Appeal / 2026年4月30日】T 0964/24 - 抗真菌化合物SCY-078のクエン酸塩結晶形に関する特許有効性控訴審判決

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 【当事者および手続の背景】 本件は、Scynexis, Inc.(特許権者・被控訴人)が保有する欧州特許第3247711号(発明の名称:「NOVEL SALTS AND POLYMORPHS OF SCY-078」)に対する異議申立手続の控訴審案件である。異議申立人であるSynthon BV(控訴人)は、異議部が本件特許に対する異議を棄却(特許維持)した決定を不服として控訴を提起した。 【特許発明の概要および請求内容】 本件特許は、抗真菌化合物であるSCY-078(化合物1)のクエン酸塩およびその特定の結晶形に関するものである。 主請求項(特許設定クレーム): SCY-078のクエン酸塩(SCY-078 citrate)全般を権利範囲とする。 補助請求項1〜3: 主請求項と実質的に同一の範囲。 補助請求項4: SCY-078のクエン酸塩のうち、特定のX線粉末回折(XRPD)ピーク(d値または2θ値)で特定される10種類の結晶形(Type A, B, E, F, M, N, O, Q, R, S)のいずれかを含むものに限定した請求項。 控訴人(異議申立人)は、D6(米国特許第8,188,085号)等の先行技術に基づき、新規性欠如(EPC第54条)、進歩性欠如(EPC第56条)、明確性違反(EPC第84条)、新規事項追加(EPC第123条(2)項)、および実施可能要件不備(EPC第83条)を主張し、特許の取消しを求めた。 2. 判決の主文 1. 原決定(異議部決定)を取り消す。 2. 本件を異議部に差し戻し、控訴答弁書と共に提出された補助請求項4(請求項1〜10)に基づく修正された請求項並びに適宜修正される明細書及び図面をもって特許を維持するよう命ずる。 3. 主な争点 争点1: 新規性(EPC第54条) - 先行技術文献D6において「SCY-078またはその薬学的に許容される塩」と「代表的な塩のリストの中のクエン酸塩」が開示されている場合、主請求項(SCY-078クエン酸塩全般)の新規性が否定されるか。 争点2: 新規事項追加(EPC第123条(2)項) - 補助請求項4における特定の結晶形(Type A等)のXRPDピーク選択・組合せ("and/or...

【EPO Technical Board of Appeal / 2026年05月20日】T 0768/24 - 僧帽弁置換用人工心臓弁装置に関する特許異議控訴審判決

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 本件は、特許権者(Twelve, Inc.)および異議申立人(Abbott Cardiovascular Systems, Inc.)の双方が、欧州特許庁(EPO)異議部の決定(欧州特許第2750630号を補助請求30に基づく補正された形で維持する旨の間接決定)を不服として提起した控訴審事件である。 【対象特許の技術概要】 本件特許は、経カテーテル(intravascular)で移送可能な僧帽弁置換用の人工心臓弁装置に関する。僧帽弁輪は解剖学的に不規則かつ非円形であり、周位漏れ(perivalvular leak)を防ぐために生体組織に適合(conform)する柔軟性が求められる一方、弁自体の機能を維持するためには弁サポートが過度に変形しないことが要求される。本件発明は、心臓組織に適合する拡張可能リテーナー(110)と、リテーナーが変形しても形状が「実質的に変化しない(remains substantially unchanged)」弁サポート(120)とを組み合わせることで、上記課題を解決しようとするものである。 【当事者の主張】 特許権者の請求・主張: 原審決定を取り消し、特許査定時のまま特許を維持すること(主請求)、または補助請求30〜64に基づく補正維持を請求。主請求クレーム1は、引用文献D26(WO 2006/113906 A1)に対して新規性を有すると主張。 異議申立人の請求・主張: 原審決定を取り消し、特許を完全に取消すこと(revocation)を請求。主請求および補助請求30は、D26により新規性・進歩性を欠き、かつ新規事項の追加(EPC 123条(2))や実施可能要件違反(EPC 83条)が存在すると主張。 2. 判決の主文 特許権者および異議申立人双方の控訴を棄却する(双方の控訴棄却により、補助請求30に基づく補正維持とした原審決定が確定)。 3. 主な争点 争点1: 主請求(特許査定時クレーム1)のD26に基づく新規性(EPC 54条) 争点2: 補助請求30における新規事項追加の有無(中間的一般化の成否 / EPC 123条(2)) 争点3: 補助請求30の実施可能要件・開示の十分性(EPC 83条) 争点4: 補助請求30クレ...

【EPO TBoA / 2026年7月10日】T 1400/24 - ソルリアムフェトル高配合即放性錠剤処方の進歩性(EPC56条)に関する控訴審判決

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 本件は、特許権者(被控訴人:Axsome Malta Ltd.)の有する欧州特許第3509581号(発明の名称:「(R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルカーバメートの処方」)に対し、異議申立人(控訴人:SANDOZ AG)が欧州特許条約(EPC)第100条(a)項/第56条(進歩性欠如)を理由として提起した異議申立控訴審事件である。 本件特許のクレーム1(確定クレーム)は、ナルコレプシー等の治療薬である有効成分ソルリアムフェトル((R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルカーバメート)を90〜98重量%という極めて高い薬物配合量(drug loading)で含み、特定の結合剤(HPC、HPMC、ポビドンから選択)を1〜5重量%、特定の滑沢剤(ステアリン酸Mg、ステアリン酸Ca、ステアリルフルマル酸Naから選択)を0.1〜1.4重量%含み、かつ投与後15分以内に85%以上の薬物を放出する圧縮即放性錠剤に関するものである。 異議申立部は本件特許の進歩性を認め異議申立を棄却したため、異議申立人がこれを不服として控訴した。控訴人は、最接近先行技術(D1:ソルリアムフェトルの臨床試験用カプセル剤を開示)から本件発明の錠剤処方に至ることは、技術常識(D6, D12, D15等)および他文献(D3)に照らして当業者が「成功の合理的期待(reasonable expectation of success)」をもって容易に想到し得たものであり、また最接近先行技術に対する直接の比較実験データも示されていないため進歩性を欠くと主張した。 2. 判決の主文 本件控訴を棄却する(原決定維持・特許維持)。 3. 主な争点 争点1: 最接近先行技術との差異点および技術的効果の認定(直接比較実験の要否) D1に記載されたカプセル剤との直接の比較データが存在しない場合に、明細書記載の他比較例(デンプン使用例等)に基づき、高薬物配合・物理的安定性(錠剤硬度)・迅速溶解性の「最適化されたバランス」という技術的効果を客観的技術的課題の設定に参酌できるか。 争点2: EPC第56条に基づく進歩性の有無(「成功の合理的期待」の有無) 構成要素(錠剤化、高薬物配合量、公知の結合剤・滑沢剤の一般的数値範囲)が個別に技術常識と...

【EPO審判部 / 2026年7月09日】T 1008/25 - 非地上系ネットワーク(NTN)におけるサービス時間推定方法に関する特許出願の明確性判断(EPC 84条)

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 【当事者および出願の概要】 出願人(審判請求人・Appellant)はDeutsche Telekom AGである。対象出願(欧州特許出願第22170704.5号)は、非地上系ネットワーク(Non-Terrestrial Network: NTN)を含む移動通信システムにおいて、衛星に搭載されたアンテナを有する基地局とユーザ装置(UE)との間の「個別サービス時間間隔(specific service time interval)」または「個別サービス時間情報(specific service time information)」を計算・推定する方法、UE、システムおよびプログラムに関するものである。 【手続の経過】 EPO審査部門(Examining Division)は、本件出願の主請求項(Main Request)および副次的請求項1〜4(Auxiliary Requests 1–4)について、用語の不鮮明さ(vague and ambiguous claim features)および技術的導出プロセスの不明瞭さを理由に、欧州特許条約(EPC)第84条(明確性要件)および第83条(開示の十分性)を満たさないとして拒絶査定(Refusal)を下した。 出願人はこれを不服として控訴審判(Appeal)を提起し、原拒絶査定の取消しおよびいずれかの請求項セットに基づく特許査定を求めた。 【請求の骨子】 主請求項のクレーム1は、移動する衛星セルにおいて、基地局から送信される「参照位置情報(reference location information)」および「一般的サービス時間情報(general service time information)」に基づき、UEが自身の位置(GNSS等で取得)とセル中心部との「横方向距離(lateral distance)」を決定し、これらに基づいて当該UEに対する「個別サービス時間(間隔/情報)」を推定・計算する技術構成を規定している。出願人は、当業者であれば明細書の記載(段落[0034]、[0039]等)や図面(図2等)、および一般的な技術知識(三角測量や標準規格)を参照することで計算・推定手法を明確に理解できるため、EPC第84条に違反しないと主張した。 2. 判決の主...

【EPO審判所 / 2026年06月02日】T 0216/25 - 衣料用組成物および便益付与剤の適用方法に関する欧州特許取消控訴審判決(進歩性欠如)

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 本件は、ユニリーバ社(Unilever IP Holdings B.V. 及び Unilever Global IP Limited、特許権者・控訴人)が保有する欧州特許第3580314号(発明の名称:「LAUNDRY COMPOSITION」)に対し、ヘンケル社(Henkel AG & Co. KGaA)、レキットベンキーザー社(Reckitt Benckiser Vanish B.V.)及びプロクター・アンド・ギャンブル社(The Procter & Gamble Company)の3社(異議申立人・被控訴人)が異議申立て(新規性欠如及び進歩性欠如等)を行った事案の控訴審判決である。 原審(EPO異議部)は、本件特許が進歩性を欠くとして、欧州特許公約(EPC)第101条(3)(b)に基づき特許を取り消す決定を下した。控訴人は原決定の取消しと、控訴理由書と共に提出した主請求(Main Request)、ならびに予備的請求1及び2(Auxiliary Requests 1, 2)に基づく特許維持を求めて控訴した。 【主請求クレーム1の要旨】 洗濯プロセス中に柔軟剤(lubricants)、フリー香料、カプセル化香料等の「便益付与剤(benefit agent)」を衣料に届ける方法であって、洗濯液(laundry liquid)に加えて、(a) 2~60 wt.%の便益付与剤、(b) 4 wt.%未満の界面活性剤、(c) 0.25~10 wt.%の陽イオンポリマー、及び(d) 水を含む「液体補助組成物(liquid ancillary composition)」を添加する方法。具体的には、洗濯液を洗濯機の洗剤投入引き出し(drawer)または計量ボール(dosing ball)に注ぎ入れ、その 洗濯液の上に液体補助組成物を重ねて注ぐ(poured on top of said laundry liquid) ことを特徴とする。 2. 判決の主文 控訴を棄却する(本件特許の取消決定を維持)。 3. 主な争点 争点1: EPC第56条に基づく進歩性(Inventive Step)の有無 最近接先行技術(D1: US 2007/0105739 A1)の実施例XIX...

【EPO審判審決 / 2026年07月02日】T 1029/24 - 遠心ペンダラム付きクラッチディスクに関する欧州特許の実施可能要件(EPÜ83条)違反に基づく控訴棄却判決

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 【当事者】 ・控訴人(特許権者):Schaeffler Technologies AG & Co. KG ・被控訴人(異議申立人1):Valeo Embrayages ・被控訴人(異議申立人2):ZF Friedrichshafen AG(口頭審理欠席) 【事実経過および請求の内容】 本件は、遠心ペンダラム(Fliehkraftpendel)を備えたクラッチディスクに関する欧州特許(EP 2652355)に対する異議申立ての控訴審手続である。原審の欧州特許庁(EPO)異議部は、訂正請求に基づくクレーム1の記載が明確性要件(EPÜ 84条)に違反し、進歩性(EPÜ 56条)を欠くとして特許取消決定(EPÜ 101条(3)(b))を下した。 特許権者(控訴人)は本判決において、異議部決定の取消しならびに「主請求(Hilfsantrag 1A)」または「副請求(Hilfsantrag 1A')」に基づく特許維持を求めて控訴した。これに対し、被控訴人(異議申立人1)は控訴棄却を求めた。 【問題となった主要クレーム(構成要件 H1A / H1A')】 主請求および副請求のクレーム1には、ガイド軌道(Laufbahnen)の形状に関して以下の特定(機能的・達成すべき結果による特定)が付加されていた。 主請求(構成要件 H1A): 「ガイド軌道は、ペンダラム質量の運動に伴い転がり体(Wälzkörper)の転がり運動を達成し、円弧状のガイド軌道に起因する転がり体の滑り運動を防止するように規定された『転がり条件(Abrollbedingung)』に由来すること」 副請求(構成要件 H1A'): 「ガイド軌道は、ペンダラム質量の運動に伴い転がり体の転がり運動が達成され、円弧状のガイド軌道に起因する転がり体の滑り運動が防止されるように設定された『転がり条件』を満たすこと」 2. 判決の主文 控訴人の控訴を棄却する(Die Beschwerde wird zurückgewiesen)。 (※主請求および副請求のいずれも欧州特許条約(EPÜ)第83条の実施可能要件を満たさないため、特許取消しが維持された。) 3. 主な争点 争点: 実施可能要件(EPÜ 83条 ...

【EPO審判部 / 2026年07月16日】T 0573/24 - ガス漏れ検出装置の試験方法に関する分割出願の追加事項違反(EPC 100(c)/76(1)条)および補助請求の不認容による特許取消維持判決

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 【当事者及び対象特許】 控訴人(特許権者):Inficon GmbH 被控訴人(異議申立人):Pfeiffer Vacuum 対象特許:EP 3 742 148 B1(発明の名称:「ガス漏れ検出装置の試験方法」)。本件特許は、国際公開公報WO 2017/167738 A1として公開された原出願(親出願)からの分割出願に基づくものである。 【事実経過及び手続の経緯】 被控訴人は、本件特許に対して異議申立てを行った。EPO異議部(Einspruchsabteilung)は、欧州特許条約(EPC)第101条(3)(b)に基づき、本件特許のクレーム1が親出願の当初開示範囲を超えている(EPC第100条(c) / 第76条(1)違反:追加事項の追加)として、本件特許を取り消す決定を下した。特許権者はこの原決定を不服として控訴(Beschwerde)を提起した。控訴人は審判手続の途中で口頭審理への不参加を表明し、口頭審理請求を取り下げたため、技術審判部(3.4.02)は書面審理により本判決を下した。 【控訴人(特許権者)の請求および主張】 原決定を取り消し、発行された形態での特許維持(主請求)、または控訴理由書とともに提出した補助請求1~9(Hilfsanträge 1 bis 9)に基づく補正された形での特許維持を請求。 【被控訴人(異議申立人)の請求】 控訴棄却(特許取消決定の維持)。 2. 判決の主文 控訴を棄却する(Die Beschwerde wird zurückgewiesen.)。[原審の特許取消決定が維持された] 3. 主な争点 争点1: 主請求(認可クレーム1)における親出願の開示範囲超過の有無(EPC第100条(c)および第76条(1)違反) 親出願に記載された特定の技術的特徴(継続的なスプレー、特定の接続態様、信号経過に基づく評価)を拡大・改変してクレーム化することが「直接かつ一義的な開示」の範囲内といえるか。 争点2: 控訴審で提出された補助請求(補助請求1, 2, 5–9)の審判手続への認容性(Zulässigkeit / Admissibility)(VOBK 2020第12条(4), (5)) 原審で出されていない新規の補助請求、または拒絶・異議理由を一部しか克服...

【EPO審判部 / 2026年05月21日】T 0421/24 - エレベーター設備の近代化手法および装置に関する異議申立控訴審判決

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 本件は、特許権者(被控訴人:INVENTIO AG)が保有する欧州特許第2342152号(発明の名称:「エレベーター設備の近代化手法および装置」)に対する異議申立手続の控訴審である。原審の異議部(Opposition Division)は、特許権者が提出した補助請求1に基づく修正形態で本件特許を維持する中間決定を下した。これに対し、異議申立人(控訴人:TK Elevator Innovation and Operations GmbH)が特許の全取消しを求めて控訴を提起した。 控訴審において、特許権者は主請求(異議部が維持認容した態様での特許維持)および答弁書添付の補助請求1を主張した。しかし、審判部(Board of Appeal)がRPBA(審判規則)第15条(1)に基づく通信において、主請求クレーム10が開示の十分性(EPC 83条)を欠く旨の予備的見解を示し、かつ補助請求1を審判手続に認めない方針を示した。これを受けて、特許権者は口頭審理当日に誤記訂正を理由として新たな補助請求1を提出した。 2. 判決の主文 1. 原決定(異議部の中間決定)を取り消す。 2. 欧州特許第2342152号を取り消す(Patent revoked)。 3. 主な争点 争点1: 主請求クレーム10における開示の十分性(EPC 83条・第100条(b)) 「プログラムされたプロセッサが目的階登録制御部(destination call control)を設置(install)するように動作可能である」という構成が、当業者にとって実施可能に提示されているか。 争点2: 口頭審理当日に提出された新「補助請求1」の審判手続への認容性(RPBA 2020 第13条(2)) 控訴答弁書提出時の誤りを補正するために口頭審理段階で新たに提出されたクレーム変更が、RPBA 第13条(2)の規定する「説得力のある理由により正当化された特段の事情(exceptional circumstances)」に該当し、手続に認容されるか。 4. 裁判所の判断ロジック(判示の要旨) 1. 主請求について(EPC 第100条(b) / 第83条 違反) 審判部は、以下の通り主請求クレーム10は実施可能要件を満たさないと判断した。 ...

【UPC第一審デュッセルドルフ地方分庭 / 2026年07月20日】UPC_CFI_209/2026 - ハーグ送達条約下での被告の受領拒否における適正送達認定決定(RoP 275条2)

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 原告(LiNA Medical AG)は、欧州特許(EP 2 593 025 B1)の侵害を理由として、被告1(中国法人)、被告2(被告1に所在する個人)、および被告3(ドイツ法人)に対し、2026年1月19日付で統一特許裁判所(UPC)に特許権侵害訴訟を提起した。 被告1および被告2はUPC加盟国およびEU外である中華人民共和国に住所を有する。そのため、裁判所事件事務局(Registry)は、ハーグ送達条約(HSC)およびUPC手続規則(RoP)274条1項(a)(2)に従い、中国の中央当局を通じて訴状(Statement of Claim)の送達を試みた。 しかし、中国の権限ある当局から「受領者が文書の受領を拒否した(The recipient refused to accept the documents)」旨の通知がなされた。 これを受け、原告はRoP 275条に基づき、公示送達手続の発令および掲示30日後の送達効力発生を求める手続上の申請を行った。 2. 判決の主文 I. 本手続(UPC_CFI_209/2026)における訴状を被告1および被告2に了知させるために既にとられた措置は、RoP 275条2項に基づく「適正な送達(good service)」を構成する。 II. 送達は本決定の日付(2026年7月20日)をもって有効に効力を生じたものとみなす。 III. 本決定は、当事者名および事件番号とともに裁判所のウェブサイト上に公表される。 3. 主な争点 争点1: ハーグ送達条約に基づく送達において被告が不当に受領拒否した場合に、既になされた告知措置をRoP 275条2項に基づく「適正な送達(good service)」と認定できるか 争点2: 送達受領拒否に対し、裁判所がRoP 275条2項の決定を下す前に、再度の代替送達手続(RoP 275条1項)を命じる必要があるか 4. 裁判所の判断ロジック(判示の要旨) 手続判事(Judge-rapporteur)は、以下の論理により、既になされた手続をもって適正な送達が完了したものと認めた。 1. RoP 275条2項の適用要件の充足 被告1および被告2に対する送達は、ハーグ送達条約締約国である中国への送達であるた...

【UPC Lokalkammer Düsseldorf / 2026年7月24日】UPC_CFI_226/2024 (App_11638/2025) - 第三者による訴訟記録の閲覧(開示)申請に関する決定

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 当事者関係: 申請人(Vereenigde Octrooibureaux N.V.)は、統一特許裁判所(UPC)の訴訟当事者ではない第三者(一般公衆・特許事務所)。 原告(Dolby International AB)は、欧州特許第3 605 534号(EP 3 605 534、以下「本件特許」)の特許権者。 被告(Optoma社ら3社)は、原告から特許権侵害で提訴されていた当事者。 事実経過: 1. 本案訴訟(UPC_CFI_226/2024)は、デュッセルドルフ地方部(Lokalkammer Düsseldorf)において、原告の訴えの取下げおよび被告の同意に基づき、2024年9月26日付けの決定により第一審手続が終了した。 2. 申請人は、UPC手続規則(Rules of Procedure: VerfO/RoP)第262条1項(b)(R. 262.1(b) VerfO)に基づき、本案訴訟の訴訟記録(Akteneinsicht)の閲覧を申請した。 3. 申請の目的として、申請人は「原告が本件特許を『Opus Audio Codec』標準規格に対してなぜ必須(Standardessentialität)とみなしているのかをより深く理解するため」と理由付けた。 4. 原告(Dolby)は本申請に反対し、主論として棄却を求め、予備的に閲覧範囲の制限(特定段落の黒塗り、添付書類の除外)および秘密保持命令の発令を求めた。 原告(Dolby)の主張骨子: ・申請は文書や証拠を具体的に特定しておらず不適法である。 ・手続終了後であっても、申請人の目的は単なる自己の知識習得に過ぎず、優先する開示利益が存在しない。 ・現在も並行訴訟が継続中(※決定時には第一審終了済)であり、訴訟記録の開示は手続の適正(Verfahrensintegrität)を害する。 ・標準必須性に関するクレームマッチング等の分析内容は、多大な資金と時間を投じて作成した原告の商業秘密(Geschäftsgeheimnis)に該当する。 2. 判決の主文 1. 申請人に対し、本案訴訟の「訴状(Klageschrift)」の閲覧を許可する。ただし、以下の開示制限を付する。  a) 訴状の段落(Randnummern)1〜174および...

【UPC Local Division Düsseldorf / 2026年07月23日】UPC_CFI_87/2025, UPC_CFI_488/2025 - EP 2 449 782特許侵害訴訟および特許取消反訴(Disney+事件 / FRAND抗弁・NDAと不誠実なライセンシーに関する重要判決)

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 【当事者】 原告(特許権者):InterDigital VC Holdings, Inc.(米国法人) 被告(被疑侵害社):The Walt Disney Companyおよびその子会社・関連会社計11社(Disneyグループ) 【背景と事実経過】 原告は、大型ブロック向けイントラ予測シグナリングに関する欧州特許EP 2 449 782(以下「本件特許」)の登録権利者である。本件特許は、オーストリア、ベルギー、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ等を含むUPC加盟国で有効に存続している。 被告らは、動画配信サービス「Disney+」において、HEVC/H.265規格に準拠したビデオストリーミング(例:『白雪姫』等のHEVCビットストリーム)を全世界およびUPC加盟国域内でユーザーに提供・配信している。 両当事者は訴訟提起前にライセンス交渉を行っていたが、交渉は秘密保持契約(NDA)下で実施されていた。原告は訴訟提起に先立ちNDAを解除したものの、過去の交渉履歴の提示についてUPCの秘密保持命令(Confidentiality Order)下で開示できるようNDAの修正を提案した。しかし被告はこの提案に合理的な理由なく応じなかった。 【請求内容】 ・ 原告の請求(侵害訴訟) :クレーム5(画像データ符号化方法)およびクレーム17(ビットストリーム)の直接侵害を理由とする、①UPC加盟11カ国における侵害行為の差止、②流通チャネルからの製品回収・永久排除、③情報開示および会計計算、④過料の設定、⑤中間損害賠償金(50万ユーロ)の支払および損害賠償責任の確認。 ・ 被告の請求 :侵害訴訟の棄却、特許取消の反訴(新規性・進歩性欠如、追加事項)、FRAND抗弁(本件特許はHEVCの標準必須特許(SEP)であり原告はFRAND義務に違反しているとの主張)。予備的請求として、5億ユーロ以上の執行担保設定および情報開示に対する秘密保持命令(R. 262A RoP)。 2. 判決の主文 1. 差止命令・回収命令等 :被告らに対し、UPC加盟11カ国において本件特許クレーム5の符号化方法により直接製造された画像データおよびクレーム17のビットストリームの提供・市場流通の差止め、ならびに商業顧客からの製品回収および市場...

【UPC CFI LD Brussels / 2026年7月23日】UPC_CFI_2192/2026 - 訴訟記録へのパブリックアクセス許可申請に対する却下決定(R. 262.1(b) RoP)

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 【当事者関係】 申請人(Applicant)は、ドイツの特許事務所(Ter Meer Steinmeister & Partner Patentanwälte mbB)であり、第三者(一般公衆)の立場から本申請を行った。被申請人(Respondents)は、統一特許裁判所(UPC)における本案訴訟(UPC_CFI_29/2026、UPC_CFI_1934/2026、UPC_CFI_1940/2026)の当事者(原告:2seventy bio, Inc.、被告:Johnson & JohnsonおよびJanssenグループ他、Legend Biotechグループ、補助参加人:米国保健福祉部)である。 【主要な事実経過および請求内容】 申請人は、係属中の本案訴訟(EP 3 689 383 B1特許に関する侵害訴訟および無効反訴)において、UPC手続規則(RoP)第262条1項(b)に基づき、訴訟記録(原告の訴状のうちクレーム解釈に関する部分、および被告の無効反訴状)へのアクセス許可を求めた。申請人は、非公開情報や被告の製品情報に関連しない部分のみ(またはマスキング版)へのアクセスを制限的に請求した。これに対し、本案訴訟の全被申請人は申請の却下を求めた。 【申請人の主張の骨子】 製薬会社に対して助言を行う特許事務所として、本件特許のクレーム解釈および有効性に関する当事者の主張内容は、自らの業務(クライアントへの法的助言)において極めて高い関連性を有する。 本件特許の欧州特許庁(EPO)に対する異議申立期限が2026年9月30日に迫っており、異議申立等の要否を検討・助言するためには、2027年初頭以降と予想される第一審判決を待つことは不可能である。 申請人は閲覧した書面を他の裁判所やEPOに提出しない旨を確約しており、訴訟の完全性・誠実性(integrity of the proceedings)を損なうものではない。 2. 判決の主文 担当法官(Judge-Rapporteur)は、申請人の訴訟記録閲覧許可申請を根拠がないものとして却下する。 3. 主な争点 争点1: 係属中の本案訴訟手続において、第三者(特許事務所)が訴訟記録の閲覧を請求する際に要求される「直...

【UPC Court of Appeal / 2026年07月22日】UPC-COA-63/2026, UPC-COA-64/2026 - 控訴審における新規補助請求の許容性判断の留保および応答答弁書提出期限延長請求の棄却命令

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 当事者: 控訴人(原告・特許権者):Advanced Brain Monitoring, Inc. 被控訴人(被告):Koninklijke Philips N.V. 外2名 事実経過および訴訟の経緯: 原審(ハーグ地方裁判所): 控訴人は、着用型体位療法装置に関する欧州特許(EP 2 437 696 B2)に基づき、被控訴人らの製品(NightBalance)に対する特許権侵害訴訟を提起(UPC_CFI_43/2025および103/2025)。被控訴人らは侵害を否定するとともに、日本特許出願公開公報(JP H03-49748、以下「JP '748」)等を引用例として特許無効の反訴を提起した。控訴人は原審の書面手続において、請求項1に「加速度計」の構成を追加限定する「補助請求1(Auxiliary Request 1)」を提出した。 原審判決(2026年3月3日): 原審は、維持された特許の請求項1はJP '748により新規性を欠き、補助請求1はJP '748および周知技術に基づき進歩性を欠くとして、侵害訴訟を棄却し、本件特許を全般的に取り消した。 控訴審の提起と追加補助請求の提出: 控訴人は本件判決に対し控訴を提起し、2026年7月3日、控訴理由書(Statement of grounds of appeal)の提出とともに、原審判決の判断理由に対処するための11個の新たな追加補助請求(additional auxiliary requests)を含む特許訂正申請(UPCA 73(4)条およびRoP 222.2条に基づく)を提出した。 被控訴人の申請: 被控訴人は2026年7月17日付の異議申出において、追加補助請求は控訴審において適法に導入されていないとして予備的決定(preliminary determination)を求めた。さらに予備的請求として、仮に追加補助請求が認容(許容)される場合、自らの応答答弁書(Statement of response)および附帯控訴状(Statement of cross-appeal)の提出期限を、裁判所の許容性決定の日から3ヶ月後に設定することを求めた。 2. 判決の主文 裁判官報告者(Judge-rapport...

【UPC控訴審 / 2026年07月22日】UPC-COA-63/2026, UPC-COA-64/2026 - 控訴審における追加補助的請求の許容性の先行判断および答弁書提出期限延長請求に関する決定

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 本件は、統一特許裁判所(UPC)控訴審における、特許権侵害・無効訴訟の控訴手続(訴訟進行上の決定:Order)である。 当事者: 控訴人(原告・特許権者):Advanced Brain Monitoring, Inc. 被控訴人(被告・被疑侵害者):Koninklijke Philips N.V. 外2名 対象特許: EP 2 437 696 B2(着用型姿勢療法装置に関する特許) 原審の経緯(ハーグ地方分科会): 控訴人は、被控訴人の製品(NightBalance)が対象特許を侵害しているとして訴訟を提起。これに対し被控訴人は特許無効の反訴(Counterclaim for revocation)を提起した。第一審手続において、被控訴人が日本公開特許公報(JP H03-49748)に基づく進歩性欠如の抗弁を提出したため、控訴人は請求項1を限定する補助的請求1(Auxiliary Request 1)を提出した。原審裁判所(2026年3月3日付判決)は、特許権者の侵害請求を棄却し、本件特許(維持特許)の新規性欠如および補助的請求1の進歩性欠如を認め、特許を完全に取消(無効)とした。 控訴審における追加補助的請求の提出: 控訴人は本判決を不服として控訴を提起し、控訴理由書(Statement of grounds of appeal)とともに、新たに11個の追加補助的請求(Additional auxiliary requests)を含む特許修正訂正申請を行った。控訴人は、これらは原審判決の判断ロジックに対する正当な防御手段であり、UPC協定(UPCA)第73条(4)およびUPC手続規則(RoP)Rule 222.2に基づき適法に受理されるべきと主張した。 被控訴人の異議および申請: 被控訴人は異議を申し立て、(1) 追加補助的請求は控訴審において有効に提出されていない(不適法である)旨の先行判断(Preliminary determination)を求めた。また予備的に、(2) 仮に追加補助的請求が認容(Admitted)され得る場合、被控訴人の答弁書(Statement of response)および附帯...

【UPC Central Division (Munich) / 2026年07月21日】UPC_CFI_714/2025 - 木材製固定具特許に対する無効訴訟判決

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 【当事者および対象特許】 原告(Raimund Beck Nageltechnik GmbH)は、被告(BAUSSMANN Collated Fasteners GmbH)が保有する単一効特許「EP 4 283 140 B1」(発明の名称:「木材および/または木質材料からなる固定具」)に対し、統一特許裁判所(UPC)中央裁判所(ミュンヘン支部)に無効訴訟を提起した。 対象特許は、少なくとも部分的に木材からなる複数の部材を結合するための木製釘等の固定具に関するものであり、軸部(Schaft)およびテーパー部(Anschrägung / sich verjüngender Bereich)の特定の構造的寸法(先端角度65°〜110°等)をクレームの特徴としている。 【原告の請求および主張】 原告は、特許法規(UPCA第65条、EPC第138条1項(c)・第54条・第56条)に基づき、本件特許のクレーム1、2、5、8〜11の無効を請求した。主な主張の骨子は以下の通りである。 新規性欠如: クレーム1の構成は、先行技術文献D1(EP 4 027 026 A1: EPC第54条(3)該当の先行出願)により直ちに予見され、新規性を欠く。 新規事項の追加: クレーム1の特定の構成(テーパー部に「引き続いて(sich anschließend)」接する先端セグメントの記載)は、出願当初の開示範囲を超えている。 進歩性欠如: 予備的請求に含まれる構成を含め、先行技術文献D5(DE 10 2018 121 065 A1)を主引用例とし、D2(DE 10 2015 121 212 A1)やD3(DE 10 2017 106 705 A1)を組み合わせることで当業者が容易に想到し得たものである。 【被告の認否および予備的請求】 被告は主請求として本訴の棄却(原特許通りの維持)を求め、予備的にクレームを限定する7つの予備的請求(Hilfsanträge I bis VII)を申し立てた。予備的請求I(Hilfsantrag I)では、従属クレーム2の数値限定(テーパーセグメントのテーパー角が軸心に対して5°〜20°)をクレーム1に組み込んだ。 2. 判決の主文 1. 欧州単一効特許(EP 4 283...

【UPC Paris LD / 2026年07月20日】UPC_CFI_530/2025 - 訴訟費用担保(R.158 RdP)の増額改定に関する手続決定

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 【当事者】 原告:KEEEX SAS(フランスのPME/中小企業、本件特許EP2949070の特許権者) 被告:ADOBE SYSTEMS SOFTWARE IRELAND LTD、ADOBE INC.(以下「ADOBE」)、OPENAI関連会社、TRUEPIC INC.、JOINT DEVELOPMENT FOUNDATION PROJECTS LLC、C2PAの4グループ計7名。 【事実経過および請求の背景】 原告KEEEXが特許侵害訴訟を提訴した後、統一特許裁判所(UPC)パリ地方裁判部は2025年12月19日の決定(確定済)に基づき、原告に対しUPC手続規則(Rules of Procedure: RoP)Rule 158に従い200,000ユーロの訴訟費用担保(EU域内承認銀行の銀行保証)の設定を命じた。 その後、被告ADOBEは2026年6月22日、訴訟の進展に伴う新要素の発生を理由に、担保金額の変更(増額)を求める申請を提起した。 【被告ADOBEの主張(増額請求)】 ・主的請求として1,800,000ユーロ、予備的に1,300,000ユーロまたは800,000ユーロの追加担保(現金預託または銀行保証)を要求。 ・根拠:①原告がRoP Rule 119に基づき新たに1億2,000万ユーロの損害賠償仮払金(provision)を請求したこと、②無効反訴や特許訂正手続による複雑化、③被告グループ間の利害対立や独自の防御戦略による費用増大、④本件訴額(5,000万ユーロ超)に基づく回収可能費用上限(200万ユーロ)からの算定が必要であること。 【原告KEEEXの主張(反対主張)】 ・請求の主的却下、予備的にも追加担保は10,000ユーロを超えない範囲とすべきと主張。 ・根拠:無効反訴や費用増大は被告らの訴訟戦略に起因するものであり、不測の新要素ではない。また、原告はPME(小規模企業)であり、過大な担保命令はEU基本権憲章第47条が保証する裁判を受ける権利(アクセス・トゥ・ジャスティス)を実質的に侵害する。 2. 判決の主文 1. RoP Rule 158に基づく訴訟費用担保の変更申請を認容(許容)する。 2. 原告KEEEXに対し、追加担保として 100,000ユーロ の提供を...

【UPCミュンヘン地方支部 / 2026年07月17日】UPC_CFI_2307/2026 - 仮処分手続における異議申立期間延長請求の棄却決定

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 本件は、申立人(Oxford Nanopore Technologies PLC、以下「Oxford」)が、被申立人ら(MGI Tech Group等4社、以下「MGI」)によるDNAシーケンシング関連装置('Cyclone Devices')等の販売・宣伝活動が自社の欧州特許(EP 2 422 198 B1等計4件)を侵害する(または侵害するおそれがある)として、統一特許裁判所(UPC)ミュンヘン地方支部に対し、緊急の仮処分(差し止め、差押え、情報開示)を申し立てた(RoP 206)事案に関する手続決定(Order)である。なお、両当事者間ではオーストラリア連邦裁判所においても同等特許に関する特許権侵害訴訟が係属中であった。 【手続経過】 2026年6月26日: Oxfordが仮処分手続(Provisional Measures)を申立て。 2026年6月30日: 裁判官報告者(Judge-Rapporteur, 以下「JR」)は Oxford に対し申立書の補正・釈明(特許クレームの解釈および非UPC締結国における請求の法的根拠の提出等)を命じるとともに、MGI に対し **2026年7月24日** を期限とする異議申立(Objection: RoP 209.1(a))の提出を命じた。また、その後の反論手続および **2026年8月19日・20日** の口頭弁論期日を含むタイムテーブルを設定した。 2026年7月7日: 被申立人1(MGI TECH GmbH)へ申立書および6月30日命令が送達された。同日、Oxford は申立対象特許を4件から2件(EP 2 964 779 B1 および EP 3 097 210 B2 の取り下げ)に減縮する補正を行った。 2026年7月9日〜10日: MGI 側の代理人はCMS(事件管理システム)への不具合によりファイルアクセス障害が生じたが、7月10日までに解消した。 2026年7月14日: MGI(被申立人1)は RoP 9.3(a) に基づき、異議申立期限を7月24日から **2026年7月31日**(予備的に7月27日)まで延長することを求める申請を行った。 2026年7月16日: Oxford は「8月...

【UPC (Düsseldorf Local Division) / 2026年07月20日】UPC_CFI_209/2026 - EP 2 593 025 B1に関する特許権侵害訴訟におけるハーグ送達条約に基づく受領拒否に対する送達有効化決定(R. 275.2 RoP)

1. 事案の概要(事実経過・請求内容) 【当事者および対象特許】 原告:LiNA Medical AG(スイス法人) 被告:1. Tonglu Qianyan Medtech Co., Ltd.(中国法人)、2. Sam Lee(被告1の事業所住所に拠点を置く個人)、3. Eunitor GmbH(ドイツ法人) 対象特許:欧州特許第2 593 025号(EP 2 593 025 B1) 【事実経過】 2026年1月19日、原告は被告らに対し、対象特許の侵害を理由として特許権侵害訴訟を提起した。統一特許裁判所手続規則(Rules of Procedure: RoP)274.1(a)(2)およびハーグ送達条約(The Hague Service Convention: HSC)に従い、裁判所登録所(Registry)は中国に所在する被告1および被告2に対して訴状(Statement of Claim)の送達を試みた。しかし、送達の権限を有する中国の中央当局(competent Chinese authority)から、「受領者が文書の受領を拒否した(The recipient refused to accept the documents)」旨の通知がなされた。 【原告の申立て・主張】 原告はRoP 275条に基づき、裁判所掲示板への掲示または電子情報通信システムでの公表による「公示送達(public service)」の手続き(掲示から30日経過をもって送達の効力を生じさせる旨の決定)を行うよう申し立てた。 2. 判決の主文 I. 本手続(UPC_CFI_209/2026)における訴状を被告1および被告2の了知に供するために既に講じられた措置は、RoP 275.2条に基づく有効な送達(good service)を構成する。 II. 送達は本決定の日付(2026年7月20日)をもって効力を生じたものとみなす。 III. 本決定は、裁判所のウェブサイト上で公表されている決定および判決から検索できるよう、当事者名および事件番号とともに掲載される。 3. 主な争点 争点1: 被告による訴状の受領拒否がある場合において、RoP 275.2条に基づく「既に講じられた措置を有効な送達とみなす決定(Order of good service...