【UPC CFI (Düsseldorf Local Division) / 2026年08月05日】UPC_CFI_181/2025 (UPC_CFI_497/2025, UPC_CFI_516/2025) - 和解に基づく訴えおよび取消反訴の取下げ許可ならびに裁判所手数料還付決定

1. 事案の概要(事実経過・請求内容)

当事者:
原告:QIAGEN Sciences, LLC(米国法人)
被告:1. bioMérieux S.A.(フランス法人)、2. bioMérieux Deutschland GmbH(ドイツ法人)

主要な事実経過:
1. 2025年2月28日、原告は被告らに対し、欧州特許(EP 2 726 883)に基づく特許権侵害訴訟をデュッセルドルフ地方分局に提起した。
2. 2025年6月10日、被告らは全者で特許無効を求める取消反訴(Counterclaims for revocation)を提起した。
3. 書面審理手続(written procedure)の終了前である2026年8月3日、両当事者は裁判外の和解(out-of-court settlement agreement)に達した旨を裁判所に報告した。
4. これに伴い、原告は侵害訴訟の取下げを申請し、UPC手続規則(RoP)規則370.9(b)に基づき未消費の裁判所手数料の還付を請求した。被告らは取下げに同意し、訴訟費用決定(cost decision)を求めない旨を回答した。
5. 被告らも同様に、取消反訴の取下げ許可、本訴手続の終了宣言、および未消費の裁判所手数料の還付を請求し、原告もこれに同意して費用決定を求めない旨を表明した。

2. 判決の主文

1. 原告の申請および被告らの同意に基づき、侵害訴訟の取下げを許可する。
2. 被告らの申請および原告の同意に基づき、取消反訴の取下げを許可する。
3. 2026年9月3日に予定されていた口頭弁論期日を取り消す。
4. 本件訴訟手続の終了を宣言する。
5. 本決定を登録簿(register)に記載する。
6. 訴訟費用に関する決定(cost decision)は要しない。
7. 裁判所書記官に対し、原告が侵害訴訟に関して支払った裁判所手数料の50%に当たる7,500ユーロを速やかに還付するよう命じる。
8. 被告らが取消反訴に関して支払った裁判所手数料の50%に当たる合計15,000ユーロを速やかに還付するよう命じる。
9. 侵害訴訟および取消反訴の訴訟物価額(value in dispute)をそれぞれ1,000,000ユーロと定める。

3. 主な争点

  • 争点1: 裁判外和解に伴う本訴および取消反訴の取下げ許可と訴訟費用決定(cost decision)の要否
  • 争点2: UPC手続規則(RoP)規則370.9(b)(i)および370.11に基づく裁判所手数料(Court fees)の50%還付要件の充足性

4. 裁判所の判断ロジック(判示の要旨)

1. 取下げの許可および訴訟費用決定の不要性について
裁判所は、当事者双方が合意した意思表示に従って判断を下した。
RoP規則265.2(c)は訴えの取下げに際して第1部第5章に基づく費用決定を行う旨を定めているが、当事者双方が各自の費用を自ら負担(each party shall bear its own costs)し、独立した費用決定手続を求めない旨を明示して合意している本件においては、費用決定を行う必要はない(UPC控訴審決定 UPC_CoA_569/2024 - DexCom v. Abbott を踏襲)。

2. 裁判所手数料の還付について
RoP規則370.9(b)(i)に従い、書面審理手続が終了する前に訴えが取り下げられた場合、固定手数料および価額ベースの手数料(fixed and value-based fees)の50%が還付され得る。
さらに、RoP規則370.11に基づき、裁判所が還付を「適切(appropriate)」と認める場合、遅滞なく還付申請を処理しなければならない。本件においては、当事者が早期段階で訴えを取り下げたことにより口頭弁論の準備作業の大部分を省くことができたため、50%の還付要件を満たし、かつ適切であると認めた。

5. 実務上・判例上の法的なポイント

1. 和解時における費用決定手続の省略(DexCom原則の定着)
UPC手続においては、取下げ時に裁判所による費用決定(cost decision)が原則必要とされるが、当事者間で「各自の費用は各自で負担する」旨の和解合意がなされ、別個の費用決定手続を放棄する旨を明確に通知した場合は、裁判所は費用決定を省略できる。実務上、和解条項および裁判所への通知文言にこの旨を明記しておくことが重要である。

2. 書面審理終了前の取下げによる裁判所手数料(50%)の確実な回収
UPC手続規則(RoP 370.9(b)(i))に基づく裁判所手数料の還付インセンティブが機能した事例である。書面審理期日(closure of the written procedure)前に和解・取下げを行うことで、裁判所の負担軽減と引き換えに訴訟費用(手数料)の半額還付を受けることができるため、訴訟戦略・和解交渉のタイミングを測る上で実務上極めて重要なタイムラインとなる。

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