【UPCハーグ地方部 / 2026年07月08日】UPC-CFI-0001536/2025(他) - 補助参加人(特許プール管理者)に対するFRANDレート設定反訴の適法性および当事者追加に関する手続命令(パネルレビュー決定)

1. 事案の概要(事実経過・請求内容)

本件は、原告Dolby International AB(以下「Dolby」)が保有する欧州特許(EP3079153)に基づき、Acer各社(以下「Acer」)に対して特許侵害訴訟を提起した事案である。訴訟係属中、特許プール管理者であるVectis IP Ltd.(以下「Vectis」)がDolby側を支援するため、自発的かつ異議なく補助参加(Intervention)を行った。
これに対し、被告Acerは特許無効の反訴に加え、Dolbyのみならず補助参加人であるVectisに対してもFRANDライセンス料率の決定を求める反訴(counterclaim for rate-setting)を提起した。受命裁判官(Judge-Rapporteur)が2026年5月1日付命令でVectisに対する当該反訴を受理したため、DolbyおよびVectisは統一特許裁判所手続規則(RoP)第333条に基づき、合議体によるパネルレビュー(Panel Review)を申し立て、Vectisに対する反訴の却下(不適法宣言)等を求めた。

2. 判決の主文

裁判所(合議体)は以下の通り決定した。

  • 受命裁判官の命令に対するパネルレビュー申立てを棄却する(Vectisに対するレート設定反訴の受理を維持)。
  • 必要な限度において、RoP第305条に基づきVectisをDolby側の共同当事者として追加する。
  • 本決定に対する控訴を許可する(RoP第220条2項)。

3. 主な争点

  • 争点1: 補助参加人に対する反訴提起の適法性(RoP第315条4項の解釈)
    主請求たる侵害訴訟を支援するために自発的に補助参加した第三者(プール管理者)に対し、被告が直接FRANDレート設定を求める反訴を提起することが許容されるか。
  • 争点2: 補助参加人の訴訟当事者への追加(RoP第305条)およびUPCA第47条との関係
    特許権者でもライセンシーでもないプール管理者に対し、UPCA第47条の当事者適格要件や国際管轄を理由として反訴の相手方または共同当事者への追加を拒絶できるか。

4. 裁判所の判断ロジック(判示の要旨)

合議体は、受命裁判官の判断を支持し、申立てを棄却した。その判断構造は以下の通りである。

(1)補助参加人の地位と反訴の許容性(RoP第315条4項・平等待遇原則)
RoP第315条4項は、裁判所が別段の命令を発しない限り「参加人は当事者として扱われる(treated as a party)」と規定している。したがって、原則として参加人に対する反訴提起は許容される。さらに、UPC控訴裁判所判例(Strabag事件)が確立した「平等待遇の原則(equal treatment)」に照らせば、被支援者(Dolby)に向けられた反訴は、それを支援する参加人(Vectis)に対しても向けられ得ると解するのが相当である。

(2)手続の効率性と既判力の相互性(RoP第316条3項、UPCA第32条1項(a))
ライセンスに関する反訴は、特許侵害訴訟に対する抗弁と密接不可分である(UPCA第32条1項(a))。VectisはDolbyからライセンス許諾権限を付与されており、Acerに対してDolbyと同様のFRAND義務を負うかが問題となる。RoP第316条3項により参加人は本訴判決の効力に拘束される以上、AcerがVectisに対して別訴を提起しなければ料率決定を得られないとする解釈は手続経済および衡平に反する。なお、Vectisが実体法上のFRAND義務や市場支配的地位を有するか否かは本案(実体審理)の事項であり、訴訟要件(適法性)の審査段階で判断すべき事項ではない。

(3)当事者追加権能(RoP第305条)と出訴資格(UPCA第47条)の峻別
UPCA第47条は「訴えを提起できる者(原告適格)」を制限する規定であり、訴訟に補助参加する者や反訴被告・共同当事者として追加される者の資格を制限するものではない。仮に控訴審で参加人に対する反訴適格が否定された場合に備え、裁判所は訴訟経済の観点からRoP第305条に基づきVectisをDolby側の正式な当事者として追加することを併せて命じた。

5. 実務上・判例上の法的なポイント

  • 特許プール管理者の補助参加に伴う訴訟リスクの顕在化:
    特許権者を支援するために自発的に補助参加したプール管理者(Vectis等)が、UPC手続上「当事者(Party)」と同視され、直接FRANDレート設定反訴等の実体的な請求・命令の対象となるリスクが明確に示された。プール管理者がUPC訴訟に関与する際の参加戦略に重大な影響を与える。
  • UPCにおける反訴・当事者追加の柔軟な運用(RoP第305条・第315条4項):
    UPC裁判所は、関連する紛争(標準必須特許の侵害論とプールを含むFRANDライセンス料率決定)を一回的かつ効率的に解決するため、手続規則上の裁量を広く行使し、手続経済を重視する姿勢を鮮明にしている。
  • 控訴審(Court of Appeal)の動向への注視:
    本決定は、補助参加人に対する反訴の可否というUPC実務上未確立の論点を含み、先例的影響が大きいことから控訴許可が付与されている。控訴裁判所の最終判断が注目される。

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