【UPCデュッセルドルフ地方部 / 2026年8月17日】UPC_CFI_996/2025, UPC_CFI_737/2026, UPC_CFI_742/2026 - 特許訂正の追加的予備的請求(RoP 30.2条)の暫定的認容及び手続追行に関する手続命令

1. 事案の概要(事実経過・請求内容)

本件は、原告(Boa Technologies Inc.)が保有する欧州特許(EP 3 003 087 B1)に関し、被告ら(FLA Europe NV 及び Shinkyung Inc.)から特許無効の反訴が提起されている事案である。

原告は、被告らが特許無効反訴の答弁に対する再答弁(Reply)および特許訂正申請に対する答弁(Defence)において特定の特徴(「ノブの第2方向への回転を介して」)に関する新規な主張を展開したことを受け、手続規則(RoP)30条2項に基づき、追加の請求の趣旨(主位請求bisおよび予備的請求1bis〜12bis)の提出許可を求める申請(Application)を行った。原告は、主位的に当該予備的請求等の提出許可を求め、予備的に、もし許可されない場合には被告らの新規な主張を時機に後れた攻撃防御方法として却下(disregard as inadmissible)することを申し立てた。

これに対し、被告らはRoP 30条2項および既往の判例法理の要件を満たさないとして、追加の予備的請求の許容に反対した。なお、被告らは原告の予備的申立て(被告主張の時機後れによる却下申立て)に対しては明確な反論を行っていなかった。

2. 判決の主文

担当裁判官(Judge-Rapporteur)は以下のとおり決定した:

  • 原告の申請(主位請求および予備的申立てを含む)に対する判断を留保(Stay)し、本案手続(口頭弁論期日中または期日後)において合議体(Panel)により併せて判断することとする。
  • 原告に対し、2026年8月21日までに、最近のUPC控訴裁判所判決(CoA Decision 13 July 2026, FujiFilm/Kodak 事件, UPC_CoA_473-474-873/2025等)が本件申請に及ぼす影響に関する追加準備書面を提出することを命ずる。
  • 被告らに対し、暫定的に認容された予備的請求1bis〜12bisに対弁するため、特許訂正申請の答弁に対する再答弁書(Rejoinder)の提出期限を2026年9月28日まで延長・付与する。

3. 主な争点

  • 争点1: 特許訂正における後順位の予備的請求(Subsequent Auxiliary Requests)の許容性(RoP 30条2項)
    手続の後段階で提出された追加の予備的請求がRoP 30条2項の要件を満たすか、およびその判断時期。
  • 争点2: 手続の柔軟性(Flexibility)と武器対等原則(Equality of Arms)に基づく手続指揮
    申立ての判断を留保し暫定的に予備的請求を訴訟手続に導入することの適否、および被告側の防御権の保障方法。

4. 裁判所の判断ロジック(判示の要旨)

(1) 手続効率性と裁量権(Preamble 4 of RoP)
担当裁判官は、手続の効率的かつ柔軟な運営(RoP前文第4項)の観点から、追加予備的請求(1bis〜12bis)の導入を暫定的に認容し、その採否に関する確定的な判断は本案手続(合議体による口頭弁論期日等)で行うこととした。申請の判断を留保することは被告に一定の負担を課すものの、手続の効率的な組織化という利益がこれを上回ると判示された。

(2) 被告側の反論の欠落と手続保障
被告らが原告の予備的申立て(被告主張の時機後れ却下)に対して反論しなかった点について、形式的にこれを認める(原告の予備的申立てを認容する)ことは本案の審理を阻害し、被告の攻撃防御を不当に制限するおそれがあることから、実質的な審理を確保する判断ロジックを採用した。

(3) 武器対等の原則に基づく答弁機会の付与
予備的請求の暫定的認容に伴う被告の防御上の不利益を是正するため、被告らに対し、標準的な特許訂正答弁期間を考慮した十分な準備期間(2026年9月28日まで)を設定し、再答弁書(Rejoinder)を提出する機会を付与した。

(4) 最新控訴審判例(FujiFilm/Kodak事件)への適合性検証
合議体による最終判断に先立ち、特許訂正の要件等に関するUPC控訴裁判所の最新判断枠組み(CoA 13 July 2026)へのあてはめを当事者に求め、原告に追加主張の提出を命じた。

5. 実務上・判例上の法的なポイント

(1) 担当裁判官によるRoP 30条2項運用の実務的アプローチ
手続段階が進んだ時点での予備的請求の追加(Subsequent Auxiliary Requests)について、担当裁判官が早期に門前払い(却下)または確定認容するのではなく、「手続効率性」を理由に暫定的に訴訟係属させ、合議体による口頭弁論時に本案と併せて実質判断するという柔軟な手続管理手法を示している。

(2) 相手方の防御権保障と期間設定
新たな訂正請求が暫定的に導入された場合、UPC実務においては「武器対等の原則」に基づき、相手方当事者(特許無効主張者)に対して実質的な検討・反論期間(本件では約1か月半)を明示的に付与することが不可欠とされる。

(3) 控訴裁判所(CoA)最新先例の即時的考慮
実務担当者は、UPC控訴裁判所が示す特許訂正・手続許容性に関する重要判決(本件で参照されたFujiFilm/Kodak事件やMeril v Edwards事件等)を常時アップデートし、進行中の初審手続においてその射程や自らの主張への影響を的確に書面化・主張立証する準備を整えておく必要がある。

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